Frankfurt生活4週目

<29日(日)>

こちらに来て3回目の日曜日。夕方散歩に出た。歩いていると,エーリッヒ・フロム広場というのがあった。大学の時に読んだ『自由からの逃走』を思い出す。そうか,そういえばフランクフルトの出身だった。ナチスの台頭について社会心理学的に解き明かした著である。

ここには,あちこちに人名のついた広場がある。モーツアルト広場も近くにあるし,そういや地下鉄の駅にノーベル賞受賞者で東方外交を展開した政治家のビリー・ブラント・プラッツというのがある。

実は,Dipfまで歩いて行く道(片道約35分)の途中,Grueneburg公園の近くに,シモン・ボリバル広場というのがあって,これで,忘れていたかすかな記憶をたどる羽目になった。どうもドイツとつながりが薄いような気がするが,これは誰だったっけ?。

調べてみたら,やっぱり南アメリカの独立運動の指導者だった。そもそもボリビアは,ボリバルに因んだ国名だし,ベネズエラの通貨はボリバルらしい。さて,なぜその人が,このフランクフルトで公園の名前になっているのか。しかも胸像まである。数年間ヨーロッパに来ていたことがあるので,そのときだろうか。しかし,関係がありそうなのは,スペインとフランスだ。謎です。

それにしても,日本に「小柴広場」とかはできないよね。

エーリッヒ・フロム広場
Erich-Fromm Platz

シモン・ボリバル広場
シモン・ボリバル広場
Dipf
Dipf

Dipfの外観
Dipfの外観

Dipfの部屋
Dipfの部屋
<30日(月)>

Dipfを紹介しましょうか。ドイツ国際教育研究所とでも訳せばいいのだろう。教育政策,比較教育,教育法,教育財政などの専門家が集まっている。教育メディアに詳しい研究者もいる。ただ,日本と違って(日本と一緒で…と思う人はいるんでしょうけど,多くの国から見れば,日本はトップクラス)PISAの成績が思いの外悪かったので,さまざまな指標をたてて教育の状況を把握して改善することに対するプレッシャーがずいぶん強くなったらしい。それで,ここの人員も入れ替わりつつあり,また研究内容も数年前に比べるとシフトしてきているということ。

仕事をしている部屋には,写真のように,机がクランク型に並んでいる。奥の窓際が僕の席(窓際族だったことが,4日後にわかるが)。ここでは,Bloechle女史と同席。彼女は,イタリアの職業教育について調べている。したがって,1日中頭の中はイタリア語だと言っている。僕が知っている数少ないイタリア語の文章が,"Devo Laborare". 「わたしゃ,働かなあかんのですわ」という意味。もうちょっとましな言葉を知らんもんかね。

ここにはレーザープリンタとインクジェットプリンタが1つずつあるのだけど,どちらもコネクションがRS-232C。USBではつながらない。したがって,デスクトップ経由でしか使えない。ちょっと面倒だ。まあでも,机やイスはとても仕事をし易い。人間工学的っていいますか,デスクワークをするには最適。ただ,後ろにはのけぞれないので,いつものだらけた姿勢にはなりにくいのです。

今日は4月最後の日。明日は休日。昼過ぎに来て,夕方までDipfにいた。こういう時には書くことがないんですね。

<5月1日(火)>

メーデー。祝日なのです。したがって,商店はみんなお休み。これに備えて,昨日の夜,食料品を買いに行った。レジはすごい列だった。昔,ドイツは平日6時までしか店をやれなかった(法律で)ので,買い物にはずいぶん困ったけど(20年前の話だな),だいぶ前に法律改正があってから,ずいぶん楽になった。近所のReweは10時までやっている。

さて,メーデーなのでおそらく繁華街でマーケットでも出てるかと行ってみた。すると,いつものプロのマーケットではなく,フリーマーケットだった(のだと思う)。しかし,いろんなものがある。アンティークの家具屋なんかは,どうやってその品物を持ち込んだのだろう。巨大な門扉まであった。

これ買って帰って何にする?そろそろうちの門にも飽きたので,とりかえましょか…って,そんなわけもないわな。だいたい,大きさがそう簡単にあわんやろ。それとも先に門を決めて,後から家を造るか?

なかなかおもしろい家具や時計,測りなんかもあったのだけど,日本に送れるわけでもなく,品評をしてまわっただけ。

その後,閉まっている店のウィンドウを見て回った。こういうことを意識してか,ショーウィンドウは広く明るくとってあって,いろいろな商品がわかりやすく展示してある。同じように,ウィンドウショッピングをしている人たちもたくさん見かける。なんとなくのんびりできた。

フリーマーケット
フリーマーケット

門扉
門扉まで売っている
交通安全教室
交通安全教室

交通安全教室のバス
交通安全教室の送迎バスかな。
でも窓がない。出張教室用?
<2日(水)>

午後から授業参観の日程調整を始めた。フランクフルトにボニファティウス小学校(教会に対する課税に講義して幽閉され,その後憤死したという教皇に因む…どうやって因むのだろう…のかどうか),ゲーテ・ギムナジウムあたりがねらい目。10年ほど前にも訪れたことがある。後者には日本語の授業があって驚いたものだ。

通勤途中に,交通安全教室がある。たくさん標識も立っているし,レールも敷いてある。別に驚くにはあたらないのだけど,「そうか,同じようなものがあったのね」と感心。その後(4日の金曜日の朝)ここから出てくる20名ほどの小学生を発見。ちゃんとやってるんだ。

ところで交通安全教室とは裏腹に,こちらのルールは,車が来なければ自己判断で渡って良いということのように見える。もちろん,信号の表示には,「青になるまで待ちましょう」とか「子どもの手本になりましょう」という表示が出ているのだけど,まあ守っている歩行者はいない。それだけ車の数も多くないということなのかとも思う。よほどの大通りでない限り,少し待てば全く車が来なくなる。というわけで,守らずに暮らしている。


<3日(木)>

前回すっぽかされた所長さんとの会議が来週8日に決定。ライプツィヒに行く日ではないか。朝からの列車を昼からのに変えなあかんようになりました。現地でいろいろ観光をと思っていたのも,9日に集約。まあ,そんなものですね。予定はあくまで予定。


<4日(金)>

だんだん,こちらの研究員との打ち合わせの日程が決まってくる。みんな忙しくって,時間の調整が難しそう。アポイントメントが2転3転する。

部屋替えになった。Dr. Koppの部屋のとなり。引退した教授が居た部屋なのだけど,まだ時々はやってくる。その時は,一緒に使うことになる。この建物の天井はとても高くて,おそらく3.5mぐらいはある。部屋の床面積もずいぶん広いのだけど,それ以上に広く見える。ただし,それは各階の階段数が多いことを意味している。僕がいるのは3階だけど,階段しかないので,実は結構大変。登り切る頃には,筋肉に疲労を感じるほどだ。だけど,実はもう1階上がある。

今日は通勤の道を変えてみた。公園を通らず,なるべく直線で動く。すると,ボッケンハイマー・ヴァーテという所に出る。ここには,中世の見張り塔,ボッケンハイマー塔が立っている。白くて綺麗な塔。ところが,ふと見てみると,向こうにみえる見本市メッセのビルのてっぺんと,形がそろっているではありませんか。

メッセの設計者がそれを意識したかどうかはわからないけど,ならべて見ると,おもしろい。おそらく同時に見ることができるのは,この場所だけ。ちょっと得した気分で写真に撮った。

ボッケンハイマー塔の側には,フランクフルト大学がある。ポスターによれば,なんだか祭りがあるとのこと。うちの裏にあるフランクフルト音大も,9時からパーティをやるのでうるさくなったらすみませんという通知をよこしていた。セメスターに1度,パーティをやるとのことだったのだけど,それはどの大学も一緒か?

音大のパーティは,そう気になることなく,静かだった。窓を閉めると外の音はかなり遮断される。結構いいつくりなのかも。

ボッケンハイマー塔とメッセ
ボッケンハイマー塔とメッセ
不思議な花
不思議な花
<5日(土)>

午前中は翻訳本の改訂作業。これが結構時間を食う。

昼食を食べて,中央駅に。歩いて行ったのだけど,途中の公園で面白いもの発見。どないなってるねん…とよくみてみると,片方の花から茎を抜いて,もう片方の花の茎を差し込んであった。ご丁寧に…。

よ〜く思い出してみると,これと同じものを昔見たことがあったような気がしてきた。何度も驚けるのは,ありがたいのかなさけないのか。

駅には,ライプツィヒ行きのチケットの変更に行った。会議が午前中に入ったので,指定を変更することになった。当然,問題なくできると思うでしょ?…お金が要った。7ユーロ(2席分)。JRではそんなことないのに。

夜はAlte Operでコンサート。ヒラリー・ハーンのリサイタル。曲目は,

  • ヤナーチェク:ソナタ
  • モーツアルト:ソナタ K.304
  • タルティーニ:ソナタ(悪魔のトリル)
  • イザーイ:無伴奏バイオリンソナタ2番
  • ベートーベン:ソナタ(クロイツェル)
  • [アンコール]パガニーニ:カンタービレ
  • [アンコール]プロコフィエフ:マーチ
  • [アンコール]ディニク:ホラー・スタッカート

ヒラリー・ハーンを生で聴くのは初めて。最初の音からすばらしかった。悪魔のトリルやホラー・スタッカートのテクニックには,唖然。どこをとっても柔らかい音色で,でもきれがある。ドッペル(重音)もはずさない。追っかけて行って聴きたい演奏家の一人になった。

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