Frankfurt生活10週目

<6月10日(日)>

再び,11時から,Alte Operでの歌劇場オーケストラの定期演奏会でした。今日もほぼ満席。これが毎月続くというのはすごいことだ。さて,曲目は…

  • シャリーノ:Autoritratto nella notte
  • マーラー:交響曲第7番
    • 指揮:パオロ・カリニァーニ
    • オーケストラ:フランクフルト博物館管弦楽団

シャリーノからマーラーの入りはアタッカ(すぐに入ること)。拍手ももらわず,気がついたらマーラーに入っていた。なぜだろう?

そして,それならそれでマーラーの最後までアタッカかというと,楽章の途中ではとまっていた。さらになぜだろう…?

Alte Oper前の広場に再び巨大なステージが組まれていた。これだけのステージやその周りの屋台があっという間にできあがる。そういえば,ミュンヘンのビール祭りの会場やその時の遊園地も全て移動式。ジェットコースターのようなものが移動でできると言う感覚は,われわれにはないな。

チェリスト
開演20分ほど前の到着を目指してAlte Operに向かっていると
前をチェリストが歩いていた
そのまま楽屋口に入っていったのだけど
そんなにぎりぎりで大丈夫なん?


DBのイベント
Alte Operの前ではイベントをやっていた
DB(ドイツ鉄道)関連のイベントらしい


聖母教会
修復されたフラウエン教会
残った石を使って復元されている


ゼンパーオパー
終演後のゼンパーオパー

<6月11日(月)>

朝からドレスデンに移動。この前来たときには,聖母教会(フラウエンキルへ)はドームが完成してなかったし,ツヴィンガー宮殿の庭には,番号を付けた石がまだたくさん陳列されていた。ドレスデン城の裏側もまだ崩れていた。第2次大戦の破壊の跡だ。東ドイツ時代には修復できなかったのだけど,統一によってようやく修復に向けて進み出したところだった。それが,今回は聖母教会もドレスデン城の裏も,ツヴィンガー宮殿も完全に復元されていた。白い石は新しくつくったもの,黒いところは元の石を使っている。感慨無量だ。

昨年の夏,日本では東京大空襲の特集をやっていた。そして,ドレスデン大空襲の番組もBSで放送していた。両方見た人は,状況のあまりの酷似におどろいたのではないかと思う。僕はそうだった。そして,その時ドレスデンで見た破壊された光景とつながった。今回,もう一度その感覚が深くなった感じがする。まだドレスデンの空襲の記憶は新しいのだ。東ドイツだったおかげで…と,修復したての町を見て思った。

夜はドレスデン歌劇場オーケストラ(シュターツカペレ)の演奏会。このオケには,かみさんの昔の生徒がいる。座った前から4列目,左から4番目の席からは,1stバイオリンの彼女がよく見えた。それより,ともかくデュトワの指揮がすごい。マ・メール・ロワは流石。最後の盛り上がりでは涙が出そう。シェエラザードもうねるうねる。それと,シェエラザードの2曲目のファゴットソロの裏で和音を鳴らすコントラバスに感動。完璧な和音。音程もバランスも。低弦がともかくいい。また,すごい演奏を聴いてしまった。自分が弾いたときに上手くいかなかった所が難なく通り過ぎていくのが不思議な感じ。

  • ラベル:マ・メール・ロワ
  • プロコフィエフ:バイオリン協奏曲2番
    • バイオリンソロ:リサ・バティアシュヴィリ
  • リムスキー・コルサコフ:シェエラザード
    • 指揮:シャルル・デュトワ
    • オーケストラ:ドレスデン・シュターツカペレ
6年前のツヴィンガー宮殿
6年前のツヴィンガー宮殿に庭で
まだ組み立てられていない石材が
まとめて置かれていた
今回のツヴィンガー宮殿
今回のツヴィンガー宮殿の屋上
庭に並べられていた石像が設置されている
土台との境目が色がちがっている

<6月12日(火)>

ドレスデンを出て,ザイフェンという田舎町に移動する手はずだった。本来は8時過ぎの電車に乗ろうかと言っていたのだけど,ちょっと早いという判断から,インターネットの検索で出てきた10:55のバスで乗り継いでいくことにした。しかし,ドレスデン中央駅に9時過ぎに行って乗車券を買おうとしたら,そのバスの便がまったく検索であがってこないらしい。しょうがないので,11:13発の電車+バスの便で行くことにした。チケットを買って,ドレスデン中央駅の中で時間をつぶす。これが結構びっくりのいい待ち時間だった。おそらく前は戸外だった所に屋根を付けて,Marcheという名前のカフェを作ってある。ここで特大コーヒーを飲んで,ランチのサンドイッチを買ったのだけど,野菜豊富なサラダバーとか,パン屋さんとか,ともかくどこを見てもおいしそう。コーヒースタンドも,搾り立てのフレッシュオレンジジュースなどを氷の中に並べたりして,とてもアトラクティブでした。

ただ,そこでコーヒーをのみながら,どうしてバス乗り継ぎ便が検索で出てこなかったのかを考えていたのだけど,それはDB(ドイツ鉄道)の端末を使ったからではないかと思い当たる。電車の窓口でバスだけの路線が出てくるとは考えにくい。自分で調べたときにもDBのサイトから調べたけど,それは一般向けの話であって,DBの券売場の端末は,DBを使うものしか出ないのではないだろうか。…というようには思ったのだけど,もう手遅れ,切符は買っちゃった。

というわけで11:13の電車に乗りに,飲み物とサンドイッチを持って行ったのだけど,これがいっこうにこない。この電車で行って,Floehaという駅で乗り換えて,Orbenhau-Gueltelという駅でさらにバスに乗り換えることになっているので,来ないと困る。最初5分遅れのアナウンス…その後10分遅れ…その後20分遅れ…この辺で窓口にいってみたら,もう接続便は無理とのこと。次の接続便になるので,結局2時間遅れぐらいになりそう。でもしょうがない。とりあえず,45分ほど遅れて出発した電車にのって,Floehaに到着。当然接続便はなく,Orbenhau行きの電車に乗り換え。この時点で,目的地が微妙にずれる(Gueltelがあるかないか)。でも,案内でもらったとおりの時刻表にしたがって,バス中央駅まで行って20分ほどバスをまつ。…やってきて乗ったのはいいけれど,途中から豪雨になった。ちょうど目的地のザイフェン中央(Seifen Mitte)に着くかどうかの時が一番すごかった。で,どこかよくわからんうちに,ともかく降りたところが,また微妙に困った位置で,Spielzeug MuseumとSeife Mitteの真ん中にある「学校(Schule)」という停留所。Museumuで降りるかどうするか迷ったあげく,次で降りようという次善手を取ったら,わけがわからなくなったという顛末。

雨は相変わらず本降りで,停留所の脇にあるガレージの軒下で15分ほど雨宿り。そのうち雨が止んできたので,バス道を歩いて行くと…目的地の一つだったWent & Kuenの店にいきなりぶつかる…してみれば,適当に降りたのもそう悪い選択ではなかったのか?そこで木工製品をいきなり入手。その店の斜め前が案内所(i)だったので,そこに入って地図をもらったり,ホテルの場所を聞いたりしてやや土地勘がつかめる。ホテルの方角に歩き始めたら途中にまた行くべき店が出現。入って木工製品をゲット。そこの職人と奥さんと一緒に写真まで撮った。


ホテルはそこから遠かった。徒歩おそらく30分ほど。途中であきらめそうになったときに,(地図を見ていたからか)わざわざ車をとめて教えてくれる人がいた。確信をもって歩けたのでよかったけど,どうせなら乗せてよ…。

ホテルは,もうすばらしい部屋で大満足。うちの家より広いような気がする。町から30分歩くということはどういうことかというと,周り一面畑だったり山だったり,牛がいたりというような何もない所のホテルということですねん。胡桃割り人形ホテル(Nussknackerbaude)というのだけど,こういう所もいいですね,たまには。さらに,電話経由でインターネットも繋がった。来週の学校訪問の情報が入っていた。ほっとする。

一息ついて,もう一度ザイフェンの町に出る。ここも,この前ドレスデンに来たときにやってきた。その時は,タクシーで来たし,来るのが遅かったので2時間ほどで駆け足で回った。今回は2泊できる。教会も懐かしかったし,その他の店にもいくつか覚えがあった。他ではなかなか手に入らないものも手に入ったし,電車の遅延や雨で出足をくじかれた割には上出来だった。そう,ホテルから町への道には近道があった。これだと15分ぐらい。

夕食はホテルに戻ってとったのだけど,これが過去ドイツで食べたものの中でもトップクラスの味。ハムでホースラディッシュとクリームを巻いてあるものとゆで卵のサラダ,鶏のクリーム煮に野菜ピラフの付け合わせ。ゼクト(スパークリングワイン)と白ワインとバイスビア(ヴァイツェンですね)。もう言うことなし。夜は窓を開けても無音だった。

駅のマルシェ
ドレスデン駅のマルシェ
開放的で明るいカフェ


胡桃割り人形館
ホテルに到着
胡桃割り人形館(Nussknackerbaude)という


壁面の胡桃割り人形

壁面の胡桃割り人形2
食堂の壁面には胡桃割り人形や煙人形がずらり
館内の廊下にも,あちこちにショーケースがあって
さまざまなおもちゃが展示されている


おもちゃ博物館
おもちゃ博物館

<13日(水)>

朝一でSpielzeug Museum(おもちゃ博物館)に行く。客がわれわれ2人だけだったので,いきなり日本語のスライドショーをやってくれた。Seiffenの名前の由来,どうしておもちゃを作るようになったか,それがどのような変遷を経て今のような産業になっているのか,どうやっておもちゃを作っているのかなど,ここで職人をしている日本人女性の素人っぽい語りで勉強した。

展示の方も,その歴史を培ってきた人たちのプロフィールとおもちゃの数々。こういうおもちゃで昔の子供は遊んだのだろうか…。だとすればどのように?ともかくここのおもちゃは小さくて精巧にできている。動くおもちゃももちろんある。おもちゃ遊びも時代によって変わっているんだろうなと思う。

フレーベルが積木のルーツだというのは,教育学をやっている人の常識。教職試験の常識でもある。ザイフェンでもその考えに基づくものを作っていた。それも展示してある。

恩物No.3
フレーベルのGabe(恩物)No. 3
恩物No.4
フレーベルのGabe(恩物)No. 4
恩物No.6
フレーベルのGabe(恩物)No. 6だと思われる
恩物No.2
フレーベルのGabe(恩物)No. 2を元にしたおもちゃ
恩物No.7
フレーベルのGabe(恩物)No. 7を元にしたミニチュア
ピラミッド
おもちゃ博物館の中心にある巨大ピラミッド
ピラミッドというのは上部にある羽根に
下からろうそくの炎をによる暖かい空気をあててまわして
その回転によって下にある台ごとおもちゃがまわる
ドイツのおもちゃ
クリスマスに飾られる

学校の様子
ミニチュアのおもちゃにはいろいろな場面がおさめられている
これは学校の教室

会議の様子
会議の様子を表したおもちゃ
エクセルで作ったプレゼン資料を前に提示している
おもちゃも現代的になっていく

ザイフェンの教会
ザイフェンの教会
この教会や神父さんは
おもちゃのさまざまなモチーフになっている
本物を見てからおもちゃを見ると感慨一入

おもちゃやのピラミッド
それぞれのおもちゃやはデコレーションに工夫を凝らす
これはピラミッドを扱う店
表に巨大なピラミッドがある

道のランタン
道の所々に綺麗なランタンが飾ってある
夜になって光が入るともっと綺麗
おもちゃを売っている店の軒先にもランタンがあるので目印になる

会議の様子
ろくろでまわしながら動物の形を掘る独特の製法
このわっかを縦に数ミリ幅で切ると
動物の形が現れる
よく見ると真ん中のが鶏の形になっているのがわかるかな?

白ワイン
昼ご飯には白ワイン
トロッケンでおいしかった

グラタン風肉の煮込み
グラタン風の牛肉の煮込みを食べた
これもいける

自分で仕上げ
夜ホテルで夕食を食べていたら
一緒に泊まっていた団体客めあてに
ミニチュア動物の仕上げをするイベントがあった
参加させてもらって削ってみた
形はろくろでつくってあるので
その角をナイフで落として整形する
おもしろかった

夜のホテル
夜のホテル
例のランタンも明るく光る

シュビッボーゲン
ザイフェン特有の窓飾りのシュビッボーゲン
よく見ると真ん中に鈴鉱山で働く人
右側にボビンレースを編む婦人
左側に動物のおもちゃを作る職人が
デザインされている
ザイフェンの歴史を刻んだおもちゃだったのだ
(写真には,亡霊のように僕が写ってますね)

牧場
ホテルの近くからザイフェンの町の横に広がる牧場を見渡す
なんとものどかな所だった
冬はスキーゲレンデになるらしい


<14日(木)>

ドレスデンにバスで向かう。まずはフライベルグまで約1時間。このバス,9:59発なのに,2分早く出発した。1日に数本しかないバスが,定刻より早く出発して良いのだろうかと不安になる。余裕をもってバス停にいてよかった。その後,フライベルグで30分ほど待って,ドレスデン行きのバスに乗り換え。こちらも約1時間。無事にドレスデンに到着。ホテルはドイツに来て初めてエアコン付きだった。部屋も広くて(というか,だだっ広くて何もない),まあ良いホテルだ。駅からトラムとバスを乗り継ぐのが面倒くさいけど。

荷物を置いて,この前月曜閉館で行けなかったツヴィンガー宮殿のアルテ・マイスター(古典画家)の美術館に行く。日本にもこの前一部が来ていた。フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」は有名。フェルメールのものでもう1枚,「遣り手婆」がある。こちらの絵は,フェルメール独特のコントラストや立体感が薄いような感じがした。やはりすごいと思ったのはルーベンス。「老女の石炭籠」を見たときはそのコントラストとに,レンブラントの絵かと思った。レンブラントの絵は,やはり日本にやってきた「ガニュメデスの誘拐」をもう一度見ることができた。絵を洗浄したことによって,子供をさらわれる母親の姿が現れたというのが評判だった絵。この絵そのものにはあまりシンパシーは感じないけど…。

カナレット(Bernardo Bellottoの別名だそうだ)が描いた何枚もの絵で,昔のドレスデンの様子がよくわかる。これはなかなか面白かった。

夜は歌劇場でモーツァルトの「魔笛」を鑑賞。13Euroの最安価チケットのため,5階の後列(3列しかない)の席。演出はアヒルの浮き輪が出てきたり,飛行機が出てきたりでなんだか現代風というかパロディというか…。タミーノ,パミーナ,パパゲーノはうまかった。夜の女王は今ひとつ。

  • 指揮:ウォルフガンク レネルト
  • オーケストラ:ドレスデン・シュターツカペレ
ゼンパーオパーの一番上から
ゼンパーオパーの5階席から舞台をみる

万国祭り
Alte Oper前の広場でお祭り
いろんな国の食べ物屋が出ていた
祭りの名前はわからず
それにしても,毎週何かやってないか,ここ?

<15日(金)>

朝の列車でフランクフルトに帰る。それからDIPFに行くと,ミュンヘン近郊のアンデックスにある小学校からファックスが来ていた。25日に視察をお願いしていたものの返事。OKとのこと。すばらしい!

なんと,今日も演奏会に行った。Alte Operでのヘッセン放送響のコンサート。演目は次の通り。

  • ルトスワフスキ:シンフォニック・バリエーション
  • マーラー:「子供の不思議な角笛」より13曲
    • 独唱:Matthias Goerne
  • ブラームス:ピアノ四重奏曲1番(シェーンベルグ編曲管弦楽版)
    • 指揮:パーボ・ヤルヴィ

シェーンベルグのこの曲を聴くのは極めて珍しい。だいたい,存在すら知らなかった。聞いてみると,確かにブラームスのような音がする。だけど何か違う。同じ人が書いた作品は,どの曲も同じような響きがするのが不思議だ。和音の作り方やその楽器への割り当てなどに個性が出るのだろうか。しかし,他の人がまねても,その雰囲気をそっくりに再現するのは難しい。それにしても,シェーンベルグ,どうしてこんなものを書いたのだろう?…と思って調べてみたら,大阪センチュリーのページで高関氏が解説していた。


<16日(土)>

旅の疲れもあってか,午前中だらだら。昼に,昨日発見したフランクフルト広場での祭りに行こうと思ったら,雨。行くのを夕方に延期した。晩飯がてら行ってみると,不思議な祭り。スタンドは,インド料理,タイ料理,ベトナム料理,寿司,中華料理,ブラジル料理,メキシコ料理,イタリア料理,それにソーセージと各国料理の展覧会。はじめから決めてたインド料理のスタンドで野菜・鶏肉カレーを食べた。カレー,久しぶり!


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