3月12日(火)〜3月20日(火)

3月12日(火)〜3月14日(木)

月曜日からまた寒くなった。しばらく寒さが続くようだ。Y本先生が来週帰国する。食事会をY本先生自家製のラーメンでやってくれた。…って,逆やん!しかし,ラーメンもほぼ6ヶ月ぶり。その他,なめろうとか,なかなかこちらで食べられないもの,すべて手作りで出してくれた。久しぶりの和食。

さらにN井さんたちが日本からもって来てくれた桜エビとか山芋粉とかでお好み焼きをしたり,うどんを食べたり。食が若干,大阪っぽくなった。粉もん,おいしい。

15日から出張に出る。この3日間は,それまでに片付けておくべき仕事。ただ敵はでかくて,どれも完成を見ず。じっくりやるしかない。


3月15日(金)

ライプツィヒ経由でハレに移動。ライプツィヒでは,ブックフェアがある。こことその後のベルリンにN出版のH田さんにアテンドする形で参加する。電子書籍やウェブ上の出版,新聞や雑誌の電子化とSNSとの連動など,いろいろなできごとが次々に起こっている今,まとめて情報収集できる機会はありがたい。

見本市期間中,だいたい開催都市のホテルは高騰する。ライプツィヒも20,000円以下のホテルはほとんどなくて,泊まりをハレ(ザーレの)にした。家族経営のこぎれいなペンション風ホテル。でも,部屋に必要なものは揃っているし(バスタブはないのが常識だけど),スタッフの応対も気持ちいい。ただ,英語はあまり通じない。別々にチェックインするので若干心配になって,フロント前のレストランでビールを飲んで待っていた。30分ほどしたところで,H田さんが到着。その後食事を…と思ったけど,あまりに外が寒いので,ホテルのレストランですますことにした。ところが…すます,どころではなくて,とてもおいしい晩ご飯だった。気付くと,周りの席にも地元の人がたくさんで ほぼ満席。食事もいいレストランだった。正解。1泊10,000円もしないのに。

ライプツィヒ塔
ライプツィヒ塔の向かいに宿がある
シュバイツァー・ホフ
お世話になったホテル・シュバイツァー・ホフ

ブックメッセ
ブックメッセの会場
3月16日(木)〜17日(土)

ライプツィヒのブックメッセ。フランクフルトのものと並んで大きなフェアだ。とてもおいしい朝食をいただいて,電車ででかけた。ところが…電車にはコスプレの若者が大量に居て,座るどころが乗るのも大変。ライプツィヒ・メッセの駅でほぼ全員降りて,みんなで会場を目指す。チケットを手に入れて入館するまで1時間ほど。えらいイベントだ。

会場は4ホール。デジタル関係はそのうち1つ。あとは,芸術関係など特殊な本のホール,一般図書と巨大本屋のホール,そして最後のホールがコミック中心。若者はそこに集まる。

今年のデジタル関係の目玉は,自己出版。作家が自分の作品を自分で編集,電子化してISBN登録などの作業をするのを仲介するサービス。何社も出店していた。執筆を支援する環境としてはパピルスが注目株か。ワードよりずっと洗練されたプロセッサーのようだ。しかも,本を書くことに特化されているので,とても使いやすいように思える。現在ドイツ語,英語版がある。日本語版があったら使ってみたい。

しかし,これがもっと進むと,出版社の存在意義が薄れてくる。でも,作家がかならずしもいい編集者ではない…というか,編集の知識はかなり専門的で,作家自身の意図とはちがえた編集をする方が良い場合が多い。下手な編集の自己出版が溢れてしまうのも考えものだ。逆に,プロの編集をかませた自己出版という方法も考えられる。最初に一定部数する危険をおかさなくても良いから,出版・編集にかかわる仲介会社にとっては都合いいかもしれないし,執筆者の経済的負担も軽くなる。いろんな可能性を考えた。

それと,日本とのもう一つの違いがオーディオブックの盛況ぶり。とてもたくさんのタイトルが出版されている。子どものものから大人のものまで。スターウォーズまであるのが不思議だった。朗読を聞くということが,日本とはちがう意味をもっているのではないかと思った。

グーテンベルグの印刷機の再現
グーテンベルグの印刷機の再現
ちょっと小型
デモンストレーターの衣装も職人風
グーテンベルグの42行聖書
グーテンベルグの42行聖書
マインツのグーテンベルグ博物館には
本物の展示があるけど撮影禁止
レプリカではあるものの立派なもの…値段も立派すぎて買えない
撮影はできた
石版印刷
石版印刷のデモもあった
この技術について詳しく知りたい
どうやってあんな細かい版ができるのだろう
朗読コンテスト
いくつかみかけたのが朗読コンテスト
結構オーディエンスもいる
日本にはない文化だ
パピルス
本の執筆に特化されたワープロアプリ
パピルス
自己出版支援サイトepubli
自己出版を支援するサイト
epubli
epubli
epubliによる出版(公開)の流れ
作成された著作はアマゾンなどのサイトで販売される
遊戯王の対戦
遊戯王の対戦会場が設けてある
コスプレショップ
コスプレのためのグッズ売り場
生まれつきブロンズの髪の女の子でも
別の色にしたくなるのね…?
あちこちで写真撮影
あちこちで写真撮影するグループあり
時間がたつにつれて着かれてへばる子たちも増える

16日の夕方,メッセを出てからライプツィヒの美術館に向かった。ここにはクラナッハのアダムとイブがある。他にもクラナッハ親子の作品がいくつか。でも,今回気になったのは,ウーデの「子どもたちを我に来させよ」という絵。背景は18世紀頃の学校か集会所のような部屋の中(学校にしては机がないので後者か…)。そして人々の服装もその時代。ところが,子どもが集まっている人の姿がどうも怪しい。裸足だし。これは聖書がらみの絵か…と思って解説を読んでみたら,マルコ10:13-16を絵だった。親がイエス様のところに子どもを連れてきたときに,それを止めようとした弟子たちをイエス様がしかって「私のところに来させなさい」,という場面。これを,ウーデの時代に引き写して描いた絵だ。雰囲気がとてもいい。

晩ご飯の場所をライプツィヒで探したけど,よさげな名店はどこも満席で,ハレに戻ってチェコ居酒屋,Wenzel Prager Bierstubenで。これが大当たり。

17日は昼過ぎまでメッセに出て,ハレに戻る。15時から,ハレの歌劇場でマイ・フェア・レディ。

ミュージカル版のマイ・フェア・レディははじめて。オケがオケピットに入っていたのは嬉しかった。ミュージカルでは映画のような細かい描写はできないけど,とても面白かった。コックニーなまりのところをドイツ語で話すところ,競馬のシーンでわざとらしい「きれいな」発音でドイツ語を話すところ,などの面白さもなかなか。

  • 指揮:Ingo Martin Stadtmueller
  • ヒギンス教授:Martin Relk
  • イライザ:Melanie Hirsch
  • ドゥーリトル(父):Christoph Stegemann
  • ピカリング:Stanlslaw Brankatschk
来年は2月14日〜16日
日本のコミックのすごさを感じたメッセ
有料の見本市にこんなに若者が集まるとは思わなかった
方や,子ども連れの家族も本屋などにはたくさん来ていた
本が8がけぐらいで買えるのだけど
入場料が2000円ほどするから元はとれるのだろうか
…いや,そういう発想がいやらしいか
来年は2月14日〜16日

その後,ベルリンに移動したのだけど,日曜日の夕方の列車は超満員。席の予約がとれなかっただけでなく,空席もなかった。これはまずい,と思ってボード・レストランを見に行ったらここも満席。となりの立ちのみのボード・ビストロにはまだ人がいなかった。なので,ここに陣取って,荷物をおいてビールとカレーブルスト(ソーセージ)を注文。それがでてくるころには,ここも満員になった。ここだと,壁にクッションがあるのでもたれていられる。なんとなくその辺りの人たちやビストロの売り場の女性たちと仲良くなりつつ,ビールを飲みつつベルリンに到着。夕食はこのソーセージになった。


3月18日(日)〜3月19日(月)

ベルリンのテレコムセンターで行われたデジタル・イノベーターズ・サミット2013に出席した。1日目は,主にメディア消費の潮流と,デジタル上のブランドの国際化についての講演。これらがどれも面白かった。どのプレゼンターも,ユーモア溢れるスピーチと効果的なプレゼン。メディアの先端の人たちの持っている事例は刺激的だ。翌日は,デジタルリソースに人を呼び込み維持する方法についての話だった。「つかみ」にアピタイザーという用語を使っているのがおもしろかった。やはり,プレゼンはユーモアたっぷりで,爆笑を誘うものもあった。

テレコムセンター会議場
テレコムセンターの会議場
ビルとビルの間にガラスで天井と壁を作った空間
天井が高くて明るい
古いビルの外壁のデザインも良いが音響も最高に良い


チーズバーガー社のベン・フー
チーズバーガー社のベン・フー氏
デジタル情報にいかにユーモアが必要かを説く
その内容のとおり,プレゼンもユーモアたっぷり
ハフィントンポスト社のジミー・メイマン氏
ハフィントンポスト社のジミー・メイマン氏
デジタル社会におけるブランドの国際化について
Innovation Media Consulting Groupのジョン・ウィルパー氏
Innovation Media Consulting Groupのジョン・ウィルパー氏
大爆笑のプレゼンの連続…やっぱり紙は大事…ってのが最高
文字では書けない映像のおもしろさ
リノベーション中のビル
テレコムセンターの並びにあった
リノベーション中のビル
表の壁だけ残して,後ろはすっかり取り去ってある
こうして景観を保ったまま新しい建物に生まれ変わる
手間暇と金をかけて文化を残すドイツ流のリノベーション
バス停の案内板
バス停のデジタル案内板
端末でバスの行き先や市内案内を見ることができる
サミットに出てからこれをみると時代遅れに見える
これはもうみんなが手元に持ってるスマートフォンでできること
おまけにモニターが暗すぎて判読するのが難しい
先端技術はどんどん陳腐化していくのだとおもった


18日の夜は,サミットのディナーがセットされていたのだけど,コンサートに抜け出した。
  • Wagner, R.:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」
  • Korngold, Erich Wolfgang:バイオリン協奏曲 D op.35
  • Stucky, Steven:オラトリオ「1964年8月4日」から「エレジー」
  • Strauss, Richart:組曲『薔薇の騎士』
    • ダラス管弦楽団
    • 指揮:Jaap van Zweden
    • バイオリン:HIlary Hahn

コンサートの目的はヒラリー・ハーンだったし,その甲斐があるすごい演奏だった。最初のG線の音から引き込まれる太さと伸びのある音。どういうわけでそういう音が出せるのか,不思議の極み。はじめて聴く明らかな難曲,ずっと引き込まれっぱなしだった。おそれいりました。アンコールも超絶的だ。ただ上手いだけじゃなくて,とても深いものを感じる。他の奏者と何が違うのだろうか…。

ダラス管弦楽団のリヒャルトは,ちょっと…だったかな。ワルツがちっともワルツでない。僕たちもウィンナーワルツを弾くときは,とても悩む。2泊目をずらすとかいう小手先のことではない,感性の問題があるのだろう。聴いたらちがうってわかるのに,弾いたら再現できない雰囲気を,おそらくアメリカのオーケストラも感じていると思う。…でも,そうしようという雰囲気もなかったような気がする。もう,割りきりかな。


3月20日(火)

ベルリン自由大学の図書館のデジタル部門のDr. Kowalakを尋ねて,話を聞いた。主に,大学図書館でどのようにデジタル情報を扱っているかというトピックについて。基本的には日本の大学図書館と大きく変わらない。研究者や学生が,さまざまなデジタルデータにアクセスできるようなサービスが提供されている。大学全体ではものすごい数のデータベースと契約している。このサービスは,図書館にやってくる市民にも提供されているが,市民は図書館を出たらそれらにアクセスできない。研究者や学生の著作物をオンライン公開することについても,大学でレポジトリに登録する場合もあるし,学会等からそれをする場合もある。これも同じ。近未来の方向性についても,日本と大きなちがいはない。

その後,こちらでちょっと有名な,Grober Unfug(大騒ぎみたいな意味)という本屋に行った。これは世界のコミックを集めて販売する所。もちろん,書棚の多くを日本のマンガが占めている。「ワンピース」や「NARUTO」がずらっと並んでいる。吹き出しの中は,ドイツ語訳。

ベルリン自由大学
ベルリン自由大学図書館

グローバー・ウンフク
グローバー・ウンフク
日本のマンガが並ぶ書棚
日本のマンガが並ぶ書棚

ブレヒトハウスの本屋
ブレヒトハウスの本屋

ベルリンの夜は,19日,20日の2日間同じレストランに行った。ブレヒトハウスの1階にあるケラーハウス。料理はオーストリア料理。19日に行った時の料理がおいしくて,翌日もつい同じ店に。2日続けて同じ所にいくと,当然覚えてもらっている。ちょっと対応がちがうのが面白い。仲良しになった感じ。ベルリンでもいい店を見つけた。

帰りにブレヒトハウスにある文化フォーラムをのぞくと,プレゼンしながら読書会のようなことをしていた。こういう市民の図書へのアプローチがおもしろい。書店で朗読会も開かれるということだ。やはり,ことばや読書についての感覚がちがているように思われる。

大人は子どもに本を読ませたいと思うけど,実際に自分たちが読んだり楽しんだり,意見を交換したりする場に参加して,そこに子どもを連れて行くような試みが必要なのだと思った。でも,そんな簡単な話ではないかもしれない。もちろん,ドイツだって子どもの本離れってのはあるわけだし。


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